ITジョグ

将来生き残るSI、ITベンダー、従来型の受託開発からクラウド・Saasへの転換

現在の日本のIT業界のSI、ITベンダーの柱となる業務の1つは受託開発です。ただ将来生き残るためには、従来型の受託開発からクラウド・Saas系モデルへの転換が必要だと考えています。そのあたりの話をデータを示しながら話しています。

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データで見る日本のSI業界・ITベンダー、過半数を占める受託開発

最終更新日:2021/4/19

IT産業には様々な企業がありますが、日本のIT産業の中でも1つの大きな業界にSI業界、ITベンダーがあります(SIはシステムインテグレータの略称でSIerとも呼ばれています)。

SI企業は、顧客企業の要望するITシステム・サービスを受託して構築・開発して運用する仕事(受託開発と呼ばれる)をメインとしています。そして、日本にはこの受託開発を業務の柱とするSIが多いです。

総務省が公表している情報通信白書(235ページ参照)によると、情報サービス業の企業数は合計3498社あり、そのうち受託開発ソフトウェア業は2321社もあります(全情報サービス企業のうち66%を受託開発ソフトウェア業が占める)。 日本ではIT業界内でSI企業の比率が高いという事をよく聞いたり目にしたりしましたが、実際にデータで66%と示されると驚愕です。

ただ、この受託開発の仕事は2010年代から転換期に入っているように感じます。SI企業自身も現状、そして将来において、受託開発を業務の柱とする事には危機感を抱いているのではないでしょうか。

SI、ITベンダーの業務の転換期、受託開発からクラウド、SaaS

SI事業が転換期に入ったと感じる要因は、クラウド、特にSaaSの登場です。2010年代に入ってからSaas企業が力をつけて、SI企業の受託開発のシェアを食い始めているのではと感じています。そのため、受託開発を柱とする従来型のSI企業もサービスモデルの転換、クラウドへの転換を迫られているはずです。

そもそも従来型の受託開発は、顧客企業毎の要望を聞いてから企業毎個別のシステムを開発していきますので、このやり方で個別の顧客企業の要望に応えていたらとても効率が悪いですし、受託開発を事業の柱とするSIの企業数が多くなってしまうのも理解できます。それに、ユーザ企業の要望を聞いてからシステムを開発するので、主導権は完全にユーザ企業にあると言えます。

一方、クラウド系、Saas系のIT企業は、まず自分達でクラウド上にソフトウェアサービス(SaaS)を構築・開発します。そして開発したSaaSを多くの顧客企業に営業活動をして売り込んでいきます。ですので主導権はSaaS企業にあると言えます。

ただ、顧客企業にとってもSaaSはメリットがあると言えます。まず、受託開発の時にSIとやりとりしていた煩雑な作業が必要なくなります。さらにSaaSを利用する場合、初期費用が安く、1ヶ月単位で定額の支払いをするだけで済むため(サブスクリプションモデル)、コスト面で大きなメリットがあります。
またエンドユーザは、仮に転職したとしても転職先で同じSaaSサービスを使う事になれば、学習コストが少なく済ませられます。ですので、Saasはサービス提供側、顧客側、エンドユーザ、三者にとってメリットがあると言えます。

ちなみにSaaSの主な例として、グループウェア、営業支援サービス、会計サービス、勤怠管理サービスなどがあります。昔はネットを活用したウェブサービスというとBtoCばかりでしたが、AWSなどのインフラが整ってきたおかげで、BtoBの業務系システムでもクラウドサービスのSaasが一気に花を開きました。

将来生き残るSI、ITベンダー

個人的な見解ですが、従来型の受託開発を事業の柱とするSI企業は企業数が多く競争も激しいですから、このままの受託開発を続けていれば疲弊してしまい、生き残るのは相当厳しいと考えています。

ではどんなSIが生き残り、成長していく可能性があるかを考えると、まずは上でも書きましたが自らSaasなどのクラウドサービスを開発し提供する企業へと転換した企業だと思います。

また、従来型SIではなく顧客企業がクラウドサービスを利用するための手伝いをするクラウド専業のSIも目立ってきています。最近はクラウド系企業のSaaSが乱立してきていますし、機能も複雑になってきていますので、それを顧客企業が使いこなせるようにコンサルからシステム構築、運用までしてくれる元請けのクラウド専業のSIはしばらく強いと考えています。

データとして、日経記事の<図表2>SI・開発型(システム・インテグレーション型)システム開発サービスの構成比推移を見てみます。2015年には90%以上あった従来型SIのシステム開発サービスの構成比率ですが、クラウドSIに徐々にシェアを食われてしまい、将来もその流れが続くと予測されています。

今までの話では、従来型SIは将来厳しいからクラウド・Saas系企業の方が有利という内容になっていますが、一概にそうではないということを最後に言っておきます。

まず、クラウド・Saas系企業も今後(現在も)厳しい競争はあるということです。そして、勝者と敗者の企業がはっきりと別れると思いますし、勝者となる企業の方が圧倒的に少数派になると思います。受託開発を行う従来型SIはあまり儲からないけど、ほとんどの企業やそこで働く人たちが食っていくには困らないよねという感じだと思います。そういう意味で安定感があるという点は従来型SI企業の良い点と言えるかもしれません。

ただ、IT業界全体で見ると、従来型SIよりクラウド、SaaS系サービスの方が効率が良いのは明らかですのでそちら方が良いと個人的には考えています。あとこのクラウド、Saasは米の企業が強いので、日本企業の中から強い企業が生まれてくる事を期待しています。