既卒者、第二新卒者、中退者、フリーターなどの若年者の雇用市場の状況について、データを交えながら考察しています。また、企業側が門戸を開いているIT業界は、若年者にとって狙い目の業界になるのではないか、景気悪化時のリスクについて話しています。
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2010年代の半ば頃から、人手不足や働き方改革という言葉をよく聞くようになりました。人手不足というのはどの程度真実なのでしょうか。ここではデータを見ながら、特に若い人の就職・雇用の状況はどうなのかについて話していきます(参考データは、厚生労働省の若年者雇用対策の現状等について)。
まず、若い働き手(若年労働者人口、15〜34歳)の推移(2ページ)ですが、1997年は2270万人、2017年は1711万人ですので、20年で550万人以上減少しています。全世代だと1997年は6787万人、2017年は6720万人とほぼ横ばいですので、若い働き手の減少の深刻さがわかります。そして将来予測ですが、2040年は1364万人とさらに大きく減少しています。
2016年頃から一億総活躍社会という言葉が出てきて、それから女性、シニア世代、外国人、氷河期世代の雇用の話題も出てきましたが、この労働力人口が減少していくデータを見ると、なんか納得してしまいます。
一方、若年者の雇用環境(5ページ)についです。新規高卒者、大卒者(平成31/3卒業)の就職率は過去最高水準、若年失業率(平成30年)はバブル期以来の低水準と若年者の就職状況はかなり良いです。リーマンショック時とデータと比較すると雲泥の差です。つまり、日本全体では若い人の働き手が減少しているという深刻な問題がありますが、若い人の視点から見ると、仕事を探すという面だけなら売り手市場でわりと良い状況に思えます。
データから読み解く若年者雇用労働市場の現状について
「新規高卒者、大卒者の就職率は過去最高水準、若年失業率はバブル期以来の低水準」と上で書きましたが、一方、3年以内離職率は大学卒が30%強、高卒40%弱で推移しています(参考:学歴別就職後3年以内離職率の推移、厚生労働省 )。また、若年者(15〜34歳)のフリーター数は143万人(平成30年)で減少傾向ですが、減少ペースは緩やかですし、若年者のニート数は53万人と高止まりしています。
という事は、失業率は低く人手不足で(特に若年者の労働力不足は深刻)、労働市場は売り手市場なのに、フリーター、既卒者、第二新卒者が相当数いるという事になります。この要因は2つ考えられます。
1つは、仕事はあるけど若年者が自ら正社員として働かない事を選択している事です。自ら選択しているなら特になんとも思いませんが、フリーター、中退者、既卒者、3年以内に離職した第二新卒者の中に、自分はレールから外れてしまったというネガティブな考えをしている人がいるなら、それはもったいないと思います。
データを見る限り、フリーター・既卒者・ニートなどの若年者は今も相当数います。そして、若年者世代の大きな人材市場があるわけですから、企業の採用側とエージェント側はそういう若年者をよく見ているはずです。ですので、自分はレールから外れてしまったと悩んでいたり不安を感じているならば、それはちょっとした被害妄想かもしれません。
2つ目の要因は、企業側が正規ではなく非正規で雇用したいと考えているからでしょう。とは言え、若年者の働き手が不足している状況では、雇用条件をよくしないと採用できないという現実もあるはずです。このあたりは今後どうなっていくか注目です。
次は、既卒者が新卒枠に応募して就職可能かどうかについてです。厚生労働省の若年者雇用対策の現状等について(37ページ)によると、新卒採用枠で既卒者を募集した事業所は69%という数値です(2018年調査)。新卒採用枠に応募可能な卒業後の経過期間については、2年超又は経過期間に上限はないとする事業所は2010年には64%でしたが、2018年には83%まで増加しています。
また、応募可能だった既卒者69%で実際に採用に至ったのは32%となっています(応募した人だけで見ると採用に至ったのは47%)。もちろん企業によるという結論ですが、上のデータからも既卒者に対して門戸を開いて募集・採用活動している企業は相当数ある事がわかります。
仕事が多くあり、就職しやすいのは、どんな業界でしょうか。まず、自分がやりたい仕事があるならば、それはそこを狙えばいいと思いますし、自分の適正がわかるなら、その適正を活かせる仕事をする事がいいと思います。
ただ、特にやりたい仕事はないけど社会に出たい、就職したいと考えているなら、人手不足で売り手市場になっていて企業側が広く採用の門戸を開いている業界を狙うのも1つの手だと思います。
職業別の有効求人倍率(引用:厚生労働省、令和元年11月) を見ると、建設躯体工事、建築・土木、情報処理、通信技術者(IT業界)、医療技術者、販売、営業、介護、飲食、接客・給仕、保安の職業、自動車運転の職業などの有効求人倍率が高いです。大分類だと、専門職、技術職、サービス業の3つが求人倍率が高いです。
手に職・スキルになる専門職と技術職、またサービス業は人手不足のようです(一方、有効求人倍率が1倍を大きく下回っている職種は、事務的作業です。IT化で人手と置き換わっている可能性があります)
企業側の求人数が多い職種、業種を上で書きましたが、業種別の3年以内の離職率のデータ、厚生労働省の若年者雇用対策(平成30年10月公表データ)(9ページ)を見ると、離職率は業種別で差があります。離職率の数値が高い順から言うと、宿泊飲食などのサービス業、生活関連サービス業娯楽業、教育学習支援業、医療福祉、小売業です。 このあたりの業種は求人数が多いといっても同時に若年者の離職率も高く、雇用は安定していません。
一方、情報通信業の3年以内の離職率は、高卒者は平均値、大卒者は平均値以下です。
また別の民間データの職種別の転職求人倍率レポート(2020年2月)を見ると、IT/通信の求人倍率が圧倒的に高いです。2014年からずっと高いので、相当な人手不足の状態が続いている事が想像できます。
また、IT人材の現状と将来予測についての調査データであるIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(経済産業省、平成28年6月10日)を参考にしてみます。詳細については見てもらえればと思いますので、かいつまんで言いますと以下の通りです。
・2010年代の後半から2020年にかけて、大型のIT関連投資や情報セキュリティ等に対するニーズの増大によりIT人材の不足が改めて課題になっている。
・今後についてもAI、Iot、ビッグデータなどの登場により、中長期的にもITに対する需要は引き続き増加する可能性が高い。それに対して、労働人口(特に若年人口)が減少することから、今後IT人材の獲得は現在以上に難しくなると考えられる。IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高い。
・IT人材も高齢化が進展しているが人材不足なので、今後もシニアIT人材に活躍していただく必要がある。
・女性IT人材について。4分の1を占める状況であるが(平成26年)、今後もIT人材が不足するのでより一層の活躍が期待される状況にある。
・外国籍IT人材は平成20年から27年の7年間で約2倍に増加。今後も獲得や活用について検討する事は重要。
IT業界は成長産業で今でも人材不足ですが(もちろん将来予測なので必ずそうなるとは言い切れませんが)、今後さらにIT業界の市場が大きくなり人手不足が深刻化する事が予測されています。そして、高齢化したベテランの方、外国籍、女性のIT人材も活躍していく事が期待されています。
既卒者、第二新卒者、中退者などの若年者が、そんな人手不足のIT業界を目指す事は自然な流れだと思います。実際、文系出身、フリーター出身、別業界出身だけど、プログラミング、ウェブデザイン、ネットワークなどのスキルを身につけて、IT業界でITエンジニアとして活躍している人も多くいると思います。また、エンジニア職以外にも、IT関連の営業、企画・マーケティング、カスタマーサポート・テクニカルサポートなどのITに関連する仕事は多くあります。
データを見ると、若年者の働き手が減少していて、今後もその傾向が続き、それに伴い人手不足の問題が起こっているという話でした。業種別だと特にIT業界で労働力不足が深刻化しているとデータが示していました。ただ、景気が悪化した場合はどうなるでしょうか?
景気が悪化すれば、弱い企業は淘汰され、雇用が失われたりするリスクはあるでしょう。特に、IT業界の一部は投資産業という面もありますから、必須ではないIT投資はどうしてもストップし、それに伴い雇用状況も悪化する可能性があると思うのです。
ただ、通信・リモートなどのインフラとなるIT分野は景気悪化に対して比較的強いと思いますし、EC・クラウド・自動化・効率化などのIT分野も、一時的な景気に左右される事はあるかもしれませんが、長期的に見たら成長が見込める可能性は高いと思います。
一時的に景気が悪くなった時の事を考えて心配しすぎるのも賢明とは思えません。確かに景気悪化は注意すべき事の1つだとは思いますが、それよりも長期的な視点でITの成長の可能性を考えるべきだと思います。短期的な景気の波はあるかもしれませんが、長期的にみればIT投資や活用は伸びて、IT人材の活躍の場は増えていく可能性は、やはり十分あると思うのです。それに、減り続けている若年者の働き手が、将来的に反転して増え始めるいう事は考えづらいです。
長くなりましたが、IT業界に興味がある、挑戦しようと考えている若年者にとって参考になれば幸いです。
IT未経験からプログラマ、ウェブデザイナなどのITエンジニアを目指す