ITジョグ

データから読み解くITエンジニア人材不足問題の動向、そして将来予測

経済産業省が発表したIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を読み解いてみました。ITエンジニア人材の人手不足問題の動向と将来予測、IT人材の高齢化、今後の注目先端IT技術、シニア層・女性IT人材の活躍などについて書いています。

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ITエンジニア人材不足時代の動向

最終更新日:2021/4/20

2010年代の半ば頃から、人手不足や働き方改革とよく言われていますが、その中でもIT業界は、どの程度人手不足なのでしょうか。ここでは経済産業省が公表している資料を読み解いて考察してみます(引用:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果、経済産業省

まず、現状と将来予測のIT人材数と人材不足数についてです。2015年から2020年にかけて大型のIT関連投資が続き、ITエンジニアの人材不足が課題となっています。大型のIT投資とは主にクラウド関連のデータセンターが考えられます。他にも、ブロックチェーン、IoT、ICT、またハードだけでなくソフトでもセキュリティ、ビッグデータ、AI、機械学習、VR/ARなどがあります。

これだけの新しいIT市場が2010年代に急速に生まれて成長し、それにあわせてIT人材の需要が増えています。需要が増えてそれに応えるIT人材も増えればいいのですが、日本では労働人口、特に若い人の労働人口が減少しているので、IT人材も需要に追いついていないようです。また、このIT人材不足数は将来さらに深刻化すると推計されています。

データから読み解く若年者雇用労働市場の現状

IT人材の高齢化

将来のIT人材の人数と平均年齢ですが、推計では2019年をピークにIT産業では入職者が退職者を下回り、IT産業人口は減少に向かうと予想されています。

また、IT業界で働く人の平均年齢は2010年から2016年まで上昇し続けていますし、将来予測も2030年まで一貫して上昇するとしています。2010年の平均年齢が37.5歳、2016年が39.2歳、将来予測の2030年が41.2歳です。

働き手の平均年齢が上昇し続ける予想は、日本の人口動態を考えれば当たり前です。そして、若い働き手がいないなら、ベテラン、シニア世代にまだまだ頼らざるを得ない状況になるのも自然な流れです。それにしても、若い人たちが多く活躍しているIT業界でも、平均年齢がまもなく40歳を超えてくるという事実は少し意外です。

将来有望な先端IT技術(ビッグデータ、IoT、AI)、先端IT人材

次に、今後注目されている技術についてです。クラウドコンピューティング、 ビッグデータ、IoT、AI、ロボティクス、DX(デジタルトランスメーション)、セキュリティ、モバイルなどがあります。

この中で既に大きな市場となっているのは、クラウド、情報セキュリティ、モバイルの3分野です。そして、今後大幅に市場が拡大すると予測されているのが、ビッグデータ、IoT、AIの3分野です。この3分野を先端IT技術と呼び、この技術の活用を担うエンジニアを先端IT人材と呼んでいます。

AI、IoT、ビッグデータを扱う先端IT人材の不足見込みですが、IT産業の中でも今後特に大幅に不足するとされています。ただ、AI、IoT、ビッグデータはIT業界の中でも新しい市場なので、人材が不足しそうだと見込まれるのは自然な考えです。ただ、このあたりはあくまで予測ですので、今後の現場の状況・ニーズや景気次第で変動すると思います。

次に、セキュリティ人材の人材数と不足数の推計についてです。情報セキュリティは既にある程度の大きさの市場になっていて、ITセキュリティ人材もそれなりにいると思われます。ただそれでも、現時点でセキュリティ人材は不足しているようですし、今後も情報セキュリティのニーズは拡大し、それに伴い人材不足も拡大すると予想されています。

攻めのIT投資と人材、景気悪化した場合

攻めと守りのIT投資についてです。守りのIT投資は、コスト削減、効率化、スピードアップを目的としたIT投資です。ITシステムやITサービスを導入すれば、業務効率を改善し、人手も減らす事ができるという感じでしょう。

一方、攻めのIT投資は、売り上げを伸ばすためのITシステムやサービスです。データ収集と分析、プロモーション、マーケティング、営業支援ツールなどがあると思います。

IT業界の現状は、攻めよりも守りの方が重視されているようです。結果が出るかどうかはわからない攻めのIT投資よりも、結果が出やすい(数値化、具体化しやすい)守りのIT投資の方を重視するということでしょうか。

ユーザ企業の過半数は、攻めのIT投資は重要だと感じているようですが、それと同時にそのためのIT人材が不足していると80%もが感じているようです。

上で書いた先端IT技術、先端IT人材はどうでしょうか。攻めのIT投資だとはっきりと言えるのは、AI、IoT、ビッグデータあたりで、このあたりの人材不足が予想されるのは上でも書いているとおりです。

ただ、景気が悪化した場合、どうなるでしょうか?景気が悪化すれば、全ての産業で、弱い企業は淘汰され、雇用が失われたりするリスクはあると思います。特に、守りのITはそうでもないと思いますが、攻めのITは景気悪化に対して弱いかもしれません。

攻めのITは、成長するための投資なわけで生き残るためには必須ではないので、どうしても景気悪化の影響を受けやすいと思います。とは言っても、一時的に景気が悪くなった時の事を考えて心配しすぎるのも賢明とは思えません。確かに景気悪化は注意すべき事の1つだとは思いますが、それよりも長期的な視点でITの成長の可能性を考えるべきだと思います。

ITベンダーの現状と今後、人材についても

ITベンダーは、IT市場は今後拡大していくと予想していますが、現在のITベンダーの事業の柱である受託開発の業務は、IT市場の拡大に合わせて拡大していくとは考えていないようです。

理由は競争激化と効率です。元々、受託を行うITベンダー・SI企業は多いですが、その既存プレイヤーのITベンダー間で受託開発の競争をするだけでなく、新しいクラウド上のサービスに市場を取って変わられる可能性があると思います。

例えば、クラウド上で勤怠管理、会計、営業支援サービスを提供すれば、個別でユーザ企業の要件に応える受託開発は行ってきたSI企業は取って代わられます。

また、ITベンダーの人材不足についてですが、開発者よりも新事業開発や事業創造を担う人材が強く求められているようです。良い人材を採用したいが求める人材がいないと言っているITベンダーは40%います。少し閉塞感を感じる結果です。元々ITベンダーは守りのIT事業をやっていたが、競争が激化するので現状を打破するために攻めのIT投資をしたい。ただ、攻めのIT投資に転じるための人材がいないとも受け取れます。

将来生き残るSI、ITベンダー、従来型の受託開発からクラウド・Saasへの転換

多様なIT人材の活用、シニア層・女性IT人材

次に、IT人材の中でもシニアと女性についてです。上でも書きましたが、IT業界の平均年齢は年々上昇していますし、今後も上昇し続けると予想されています。今後もITニーズは拡大し、それに伴い必要とされるIT人材も増加すると予想されていますが、そのニーズに応えるためのIT人材が追いつかないならば、IT人材不足問題はますます深刻化します。

人材不足対策の1つとして、シニア層のIT人材の活躍です。そのため、50代以上のシニア層のIT人材の割合が高くなると予想されています。シニア層の割合が2010年が10.9%だったのが、2030年の推計は27.7%とされています。

また、現状IT人材の4分の1程度の女性のIT人材についてもシニア層同様に活躍されることが期待されています。さらには、外国籍IT人材も年々増加しています。IT人材不足問題を緩和するためには、今後もシニア層、女性、外国人に頼らざるを得ない状況になる事も考えられますが、そういう方々が将来のIT業界のどういうポジションにいるか、どんなIT人材になるかは今後次第でしょうか。

IT人材の高齢化、ミドル・シニア世代のITエンジニアの現状と今後の活躍

ITベンチャー起業家、日本と海外の比較

ITベンチャー起業家についてのデータですが、日本でITの起業、独立したいと強く思っている人材は5.2%です。海外と比較すると、インドが56%、 インドネシアが53%、米国が43%、中国が23%ですので、日本の低さが際立ちます。日本でもITベンチャーの起業はある程度活発だと思っていましたが、海外と比較するとかなり差があります。

最後に

IT人材は現状で人材不足であるし、将来はさらに人材不足の問題が深刻化すると予想されています。特に若年者のIT人材が不足するため、シニア層や女性などの多様なIT人材の活躍が今後期待されています。

またIT業界内の分野で言うと、IoT、AI、ビッグデータなどの先端IT人材やクラウド、セキュリティなどの人材が多く不足すると予測されています。ただ、上でも少し書きましたが、これらの分野はほぼ攻めのIT産業であり投資産業ですので、景気が悪化すれば投資自体がストップして、それに伴い雇用状況も悪化するリスクはあります。そこは頭の片隅にでも置いておくべきだと思います。

とは言え、一時的に景気が悪くなった時の事を考えて心配しすぎるよりも、長期的な視点でITの成長の可能性を考えるべきだと思います。短期的な景気の波はあるかもしれませんが、長期的にみればIT投資や活用は伸び、新しいIT産業が生まれて拡大していき、IT人材の活躍の場は増えていくという可能性は、やはり十分あると思います。